※ あくまでSAMPOIKO(さんぽいこ)内での検証の話です。
前回までは、首輪にかかる力に関しての話でしたが、今回は実際のところわんちゃんにどれほどの負荷がかかるか考えて行きたいと思います。
前回まではこちら↓↓
点と面

前回までに計算で求めた力(ニュートン)を、そのまま負荷として受けると、非常に大きな負担になることがわかります。これはあくまで理論上の話で、力点や作用点といった“点”にかかる力を前提としたものです。 しかし実際には、力が一点に集中して加わることはほとんどなく、通常は力が“面”で分散して作用するため、計算上ほどの極端な負荷がかかるわけではありません。

たとえば柔道を例にすると、同じ力で畳に投げられたとしても、受け身の上手な人とそうでない人とでは、身体にかかる衝撃は大きく異なります。
2つ考えてみたい
今回の投稿では、2つの観点から力のかかり方について考えてみたいと思います。
1つ目は「圧力」について。
2つ目は「応力集中」と呼ばれる現象です。
これらは、物体に加わる力がどのように分散・集中するかを理解する上で、とても重要な概念です。順番にわかりやすくご紹介していきます。
圧力

まずは「圧力」の観点から見てみましょう。
たとえば、500Nの力がかかると仮定して、接触面の大きさごとに圧力を計算してみます。
ベルト幅が1.5cmの場合(長さは10cmとする)
圧力:500N ÷ (1.5cm × 10cm) = 33.3 N/cm²ベルト幅が2.0cmの場合(同じく長さ10cm)
圧力:500N ÷ (2.0cm × 10cm) = 25 N/cm²
このように、接触面積が広くなるほど、単位面積あたりの圧力は小さくなります。
つまり、ベルト幅が広い方が、犬の体にかかる負担が少なくなると考えられます。特に喉まわりのようにデリケートな部位では、幅広の設計がより優しいと言えるでしょう。
応力集中
次に、「応力集中」という現象についてご紹介します。
応力集中とは、特定の箇所に力が過剰に集中してしまう現象のことを指します。
先ほど「圧力」については、面全体に力が均等にかかる前提で計算しましたが、現実にはそう単純ではありません。計算上は面積で割っているだけですが、実際の使用場面では力が一点に集中してしまうことがあるのです。
たとえば柔道の例をもう一度挙げると、受け身が上手くできていても、帯の結び目がちょうど畳との間に挟まってしまったら……とても痛そうですよね。
このように、突起物のような部分があると、そこに力が集中してしまうのです。
応力集中が発生しやすい場所としては、「角」「突起」「穴」「段差」などが挙げられます。
犬の首輪で言えば、以下のような部分が該当します:
バックルや金具の部分
ベルトに開いた穴
ベルトのエッジ(端の部分)
ベルト同士が重なる段差部分
ここまでの話を踏まえ、**「丈夫でありながら、犬に負担をかけにくい首輪」とは何か?**について、次にまとめてみたいと思います。
丈夫な首輪・負担の少ない首輪とは?
其一:わんちゃんへの負担
首輪にかかる力の方向は、当然ながらリードを引っ張る方向になります。
このとき、力を直接受け止めるのは、首輪のうち、リードの取り付け位置と反対側の部分です。
つまり、引っ張られたときに最も強く圧力がかかるのは、犬の首の前面から側面にかけての部位になります。
この部分に強い力が一点集中してしまうと、わんちゃんにとっては痛みや不快感、さらには怪我の原因になることもあります。
したがって、首輪の設計においては、
力が一点に集中しないよう接触面を広くとること
金具や段差などの応力集中を避ける工夫
わんちゃんの動きに合わせて柔軟にフィットする構造
などが、負担を軽減するために重要な要素となります。


受ける面は広い方が良い
首にかかる力を分散させるためには、接触面をできるだけ広くとることが大切です。 そのため、ベルトの幅は広い方が望ましく、サイズに合うのであれば、1.5cmよりも2.0cm、2.0cmよりも2.5cmの幅広タイプを選ぶことで、圧力をやさしく分散させることができます。

突起部分はあってはダメ
また、力を受ける面に金具や縫い目の段差などの突起物があると、そこに力が集中してしまい、わんちゃんへの負担が大きくなってしまいます。 特にリードの引っ張りがかかる位置に出っ張りがあると、痛みや皮膚へのダメージにつながる可能性もあります。 なるべくフラットでシンプルな構造を選ぶことが、犬にとってやさしい首輪のポイントです。

ベルトのエッジ(コバ)は滑らかに
細かい部分ですが、ベルトの厚みやエッジの仕上げも重要です。 しっかりと厚みがありつつ、角が丸く滑らかに処理されている首輪は、肌への当たりも柔らかく、摩擦による負担を軽減できます。 特に首を大きく動かす犬や、毛が短く敏感な犬には、こうした仕上げがより重要になります。
其二:首輪の強度
首輪には、犬の動きやリードから伝わる力が集中する箇所があります。特に大型犬や力の強い犬の場合、首輪そのものの強度も非常に重要なポイントです。

ベルトの穴部分
首輪のベルトに開けられた穴は、バックルの金具を通して固定する重要な部分です。 ここには繰り返し力が加わるため、摩耗や裂けのリスクが高いポイントでもあります。 そのため、体重が大きい犬種用の首輪では、穴部分を金具(ハトメ)で補強するなどの対策が必要です。 特に幅広の2.5cmタイプなどは、標準でハトメ補強を施し、耐久性を高めています。

穴の形状にも工夫を
また、ベルト穴の形状も強度に関わります。 角のある四角い穴よりも、丸い穴の方が応力が集中しにくく、破れにくいという特性があります。 そのため、強度を重視する場合には、丸穴の設計が望ましいと言えるでしょう。
まとめ
わんちゃんの快適さと安全を両立するために
丈夫で、わんちゃんにやさしい首輪を選ぶためには、
接触面が広く、圧力が分散される設計
突起や段差の少ない、滑らかな構造
強度の高い素材と補強
応力集中を防ぐ、細かな工夫
といったポイントを意識することが大切です。
飼い主さんが安心して使えること、そして何より、わんちゃんが毎日快適に過ごせること。